16.09.14

『TADFUR』職人 武藤 氏/取締役CMO 松田 氏

今年で創業50周年を迎える毛皮専門のリフォーム、お直しの「TADFUR(タッドファー)」。
熟練職人のファーについての知識、修理技術は指折りもので、クローゼットに眠っている多くのファーアイテムを、時代に合わせて蘇らせています。

今回はTADFUR(タッドファー)の職人の武藤さんと、取締役CMO(創業3代目)の松田さんにお話をお伺いしました。
役割は異なるお二人ですが、“ファーを長く大事に使ってほしい”という共通の想いのもと、今の時代に相応しいご提案をされています。


―まずは、職人の武藤さん。

毛皮への入り口は、友人の紹介してくれたアルバイト


今の仕事をするきっかけになったのは20歳くらいの時に友人にアルバイトに誘われたのがきっかけでした。

友人の父親が毛皮の縫製工場を経営していたことから、「うちの工場でアルバイトしてみないか?」という誘いがあったのです。その時の私は毛皮自体には興味はなかったものの、手を動かしながら何かを作ることが好きだったので、すぐ働くことになりましたね。

そこで1年半ほど働いた後、築地にあるファーの生産と販売を行っている会社に入社しました。

TADFUR
前職の縫製工場での経験を活かし、主に毛皮商品の生産に携わることができましたが、初めの1年間は毛皮の縫い方やミシンの使い方など基本的なことを何度も繰り返し勉強しました。
私の毛皮職人の人生の中の修行時代とも言えます。笑


オーダーメイドのコートをお渡しした時のお客様の笑顔


築地の会社は、百貨店などに生産した商品を卸すこともしていたのですが、一般のお客様からのオーダーメイドを受け付けることもありました。

そこで、あるお客様が最高級の毛皮素材である“セーブル”という毛皮のコートをオーダーされ、その製造を任されました時のことです。

TADFUR リメイク
コートを製造する時は、毛皮と毛皮をつなぎ合わせていくのですが、ただ単に繋ぎ合わせればいいというわけではありません。

同じ種類の毛皮でも1つ1つの色や質感が全く異なるので、ただ単に繋ぎ合せただけでは仕上がりが不自然になってしまいます。
そういった意味でオーダーメイドの毛皮のコートの製造というのは非常に技術と根気のいる作業であり、簡単なことではないのです。

TADFUR リメイク
そして、実際にそのコートの製造には非常に苦労しましたが、商品をお渡ししたお客様(ご本人様)も、旦那様も非常に喜んでくれました。

私は職人ですから、お客様と直接関わる機会がほとんどありませんでしたが、お客様から直接喜びの声を聞けたことで自分の自信にも繋がりましたし、なにより毛皮職人として働いてきてよかったと思えた瞬間でしたね。


毛皮の特徴を最大限まで引き出すお直し


築地の会社で25年ほど勤務したあと、独立して、製造した毛皮をアパレルメーカーなどに卸すことを16年続け、以前から付き合いのあった毛皮のリフォーム専門店であるタッドファーに入社しました。

今は主にリフォームにお持ち込み頂いた商品の縫製を担当しています。

TADFUR リメイク
持ち込まれる毛皮の種類はセーブル、ミンクなど様々な種類の毛皮でそれぞれの特徴もかなり異なってくるのですが、長年製造に携わってきた経験から、どのような縫製をすればその毛皮の特徴を最大限まで活かせるか、どこまで耐久性と見た目の美しさを両立できるかを常に考えています。

TADFUR リメイク
解体の仕方ひとつ取っても、再度縫製した時の仕上がりには歴然とした差が出るので、毛皮が本来持つ美しさが失われぬよう細心の注意を払っていますね。


タンスの肥やしを生まれ変わらせたい!


最近は、バブルの時に購入したコートを持ち込まれるお客様もいます。
バブルの時、その恩恵を受けていた日本人はものを買っては捨て、また新しいものを買い、製造に携わっていた私からすれば自分が苦労して作ったものが短期間で捨てられてしまうのはとても悲しいことでした。

TADFUR リメイク
ですが、今になってその時に購入したコート修理してまた着ようとしてくれていることはとても嬉しいことです。

私がリフォームして洋服を作り直し、タンスの肥やしになっていたものがまた素敵な毛皮の洋服に生まれ変わることで、お客様が喜んでくれれば嬉しいですね。



―続いて、取締役CMOの松田さん。

3代で歩んできた毛皮専門店


この仕事は、僕の祖父が偶然関わることになった毛皮製品販売のアルバイトから始まったそうです。当時、戦後処理で日本に駐在していた米国人やその家族が主な顧客でした。
彼らとの会話の中で祖父は「僕らの母国では毛皮を直すお店があるのだが日本にはないのか?」と言われたそうです。

これはビジネスチャンスだと思った祖父は毛皮のコート専門のお直し屋さんを1967年に創業し、祖母と協力しながら縫製ができる職人を育て、やがて今の基になる会社となりました。

TADFUR 松田さん
当時はとにかく毛皮のコートが売れていた時代でしたので、百貨店で大量に販売されていた毛皮のコートの袖丈や着丈など微調整を施す修理を主に請け負っていました。

会社が父の代になると、デザインが古くなった毛皮のコートのリフォームが始め、シルエットを大幅に変えたり、縫製方法の研究など新しいデザインにするためのメソッドが開発されていきましたね。


毛皮のお直しに社会的意義と、ビジネスとしての可能性を感じた


いくら家業とは言え、毛皮を取り扱うビジネスにはあまり興味が湧きませんでした。お客様の多くは年齢の離れた女性、さらに裕福な方が多いということもあって、当事者意識も湧きにくいですしね。笑

TADFUR 松田さん
将来はシステムエンジニアになろうと思っていた理工系の大学時代、ちょうど世の中でベンチャー企業がメディアで取り上げられるニュースなどを観るうちに、“いつかは起業して世の中に貢献したい”という思いが沸いてきました。

そして、大学卒業後は設立直後の小さなベンチャー企業に就職し、経営のノウハウを学んだ後、家業を継ぐことを決めました。

TADFUR 松田さん
社会人になった当初は、自分で会社を作りたいと思っていたのですが、TADFUR(タッドファー)が扱う毛皮という存在にもの凄くビジネスとしての可能性を感じました。

毛皮というだけでも珍しいのに、そのお直しの専門店です。ニッチの二乗です。差別化が図りやすく、ビジネスとして継続していくのに有利だなと思ったのは、家業に入ることの大きな理由の1つになりましたね。

実際、関わり始めてみて、日本中に困っている人がたくさん居ることが分かりましたし、毛皮という素材が驚くほど再利用に適していることが分かり、この事業を続けていくことの意義を強く感じました。


もっと多くの人に毛皮のお直しについて知ってもらいたい


現在僕はマーケティングの責任者として、この毛皮のお直しというサービスを世の中に広めることに取り組んでいます。

創業50年、これまでずいぶんと周知に努めてきたつもりですが、いまだにお客様から「毛皮をこんなに色々な方法でお直しできるなんて知らなかった」という声をいただくことが多く、まだまだ知られていないのが実情です。

リメイクのご相談会を各地の百貨店で開催することはもちろん、縫製過程を実演するイベントを開催したり、サンプル品を展示したり、毛皮お直しの技術や毛皮ならではの特性を実感していただけるような機会を積極的に設けています。

TADFUR 松田さん
数年前から、リメイク時に出る端切れを再利用したリングやバングルなどのアクセサリー制作を始めました。少数限定ですが、百貨店の店頭やイベント、一部オンラインショップ等での販売を行っています。


モノを大事に、長く使うという事を考えるキッカケに


毛皮のコート1着を仕立てるのに、たくさんの命を頂いていることを、私たちは忘れがちです。毛皮に限らず、その他の皮革製品や、食べ物だってそう。その事実に向き合うことなく、目の前にあって当たり前という感覚になってしまってはいけないなと思います。

当社にご相談に来られる方は口を揃えて「とても捨てられなくて、ずっと困っていた」とおっしゃいます。大事にしなきゃというお気持ちは皆さんお持ちなんですね。

普段、洋服のお直しもあまりしなかった方が、毛皮のお直しには決して安くないお金を支払う。毛皮のお直しという経験を通じて、他の持ち物も、直しながら大事に使ってみようと思って頂けるかもしれない。そこに僕はこの仕事への新たな意義を発見しました。

TADFUR 松田さん
利用できずにクローゼットに眠らせたままになっている毛皮製品があれば、ぜひ一度弊社にご相談頂きたいと思います。リメイクした上でお嬢さんやお孫さんへのプレゼントにされるお客様も最近は多くいらっしゃいます。世代を超えて想い出が共有される、そんなイベントに関われるのはとても嬉しいことですね。

今後もこの仕事を通じて「ものを大事に長く使う」というテーマと真正面から向き合っていきたいと考えています。


このお直しができるお店

SHOP Information

TADFUR/タッドファー

住所: 東京都千代田区五番町12-4 五番町コート302
TEL: 03-6272-9257
店舗ページ: http://tadfur.co.jp/

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