市川海老蔵さんが愛用する一足!『大野屋總本店』のつたえる美しき足袋(たび)の世界

16.08.01

市川海老蔵さんが愛用する一足!『大野屋總本店』のつたえる美しき足袋(たび)の世界

市川海老蔵氏をはじめ、中村勘九郎氏、野村萬斎氏など日本の伝統芸能の関係者から圧倒的な支持を得ているのが、「大野屋總本店(おおのやそうほんてん)」さんの手作り足袋(たび)。人気の秘密は足もとが美しく見えるよう、職人さんがひとりひとりに合わせてつくる「新富形」という独自の形でした。今日も日本を代表する役者の美しい足元を、職人さんの丁寧なものづくりが支えています。

今回は200年以上続く歴史と職人技術、足もとの美からみえてくる日本文化の美しさついて、7代目・福島茂雄さんにうかがいました。



新富町に新富形あり。役者を支え続ける足袋の誕生秘話。

                  

東京一の芝居小屋!地域とともに発展した歴史


当店は創業して200年以上が経ちますが、長年この新富町で足袋の製造・販売をしています。
 
創業当初は装束(肌着など)を中心にした仕立をしていました。三田などでリヤカーに乗せて売っていたそうです。その後、2代目の頃にこの新富町に移ってきました。

そのころこのあたりは、明治時代に入り芝居小屋たくさんができ始めた地域でした。今は税務署があるところに、新富座という芝居小屋があったんです。その新富座が1872(明治5)年にでき、その後1889(明治22)年には歌舞伎座もできました。大正時代には新橋演舞場もできて、このあたり一帯が日本で有数の芝居小屋が集まる地域として発展したんです。

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歌舞伎と縁が深い地域となったことで、当店もしだいに役者さんの足袋をおつくりすることが多くなっていきました。今でも歌舞伎関係の建物は近いですし、新富町には松竹の衣装会社がありますので、時代物の映画などで足袋のご依頼をいただいてお作りすることもあるんです。

役者の心をつかんだ5代目の秘策



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大きな転機となったのは、私の祖父にあたる5代目が「新富形(しんとみがた)」の足袋を生み出したことです。これは着物を着た際、足もとが美しく見えるような独特の作りとなっています。これがきっかけで大野屋の名は広く知れ渡るようになりました。

「新富形」を生み出した5代目はとても人々を引き付けるのが上手な方でした。「舞えば足もと、語れば目もと、足袋は大野屋總本店」というのが当店のうたい文句になっていますが、このフレーズも5代目の発案です。舞い演じることを仕事とされている方々がお得意様でしたのでこういったフレーズを宣伝として使ったんです。

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また5代目は新しいものを取り入れるのも早かった。今も職人が使うドイツ製のミシンを、いち早く導入しました。当時珍しかった車も早くに手に入れて、足袋をつんでお客様のもとへ届けたということもあったそうです。そういったことがすべて宣伝効果になっていたのでしょう。

残念ながら祖父は私が生まれてまもなく他界してしまいましたが、今でも多くのものが息づいているんです。



名役者が惚れこむ 舞えば足もと、語れば目もと、足袋は大野屋總本店

                                  
歌舞伎関係者が多い芝居の町として栄えた明治時代、芝居小屋だった新富座に由来して地名も新富町と名づけられました。

これにちなんで5代目が生み出した “新富形”は、足もとが美しく見えるようなつくりです。日本の伝統芸能の世界では手先や足先のしぐさが重要視されているため、新富型が人気なんです。

足もとを美しく見せるのは、足の幅が細く見えるように足袋の底の幅は小さめにとっており、そこから表の生地は足の甲を包み込む形だからです。縫い方も、熟練の職人によって指がきれいに収まるよう縫っています。

足袋の価値は人それぞれ。お客様の求める理想をかたちにする。


足袋は足にぴったりしていればいいというものではないんです。それはお客様の使い方によってそれぞれにあう形があるからです。当店の足袋は、そういったお客様のニーズに応えるモノづくりをしています。

舞台で使うのならば足を小さく美しく見せるつくりにします。茶道の時やお寺で使うことがおおければ正座を長くしても窮屈にならないよう足首に余裕をもったつくりにしています。細かい技術や職人の手作業だからこそニーズに合わせた足袋作りができるんです。

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歌舞伎で使う足袋は、配役に合わせて色や柄のあるものを使うのが一般的です。お忙しい方が多いので楽屋などにお伺いさせてもらっています。型を取るのはそれほど時間はかかりませんが、役柄に合わせたニーズをお伺いして形を決めていくんです。

たとえば市川海老蔵さんが『助六』という演目で使われた足袋は鮮やかな黄色です。役
柄から、力強さを見せるため大きくしっかりとしたつくりで、履き口もさがっているのが特徴です。



新富の地で140年以上。時代をこえて足元の美しさをきわめたプロ集団

                           
本店と製造をする工房は同じ建物内で行っています。今では登録有形文化財にもなっています木造の2階建て建築は、関東大震災後に建てられたものです。昔から変わらずこの建物で職人が日々足袋づくりを行っています。

まず足に測り型紙を起こし、それに合わせた型紙と鉄型を用いて左右の足に使う布を切り出していきます。

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裁断後はミシンで縫い合わせる作業ですが、平面の布を最終的に丸く美しい立体となるよう仕上げるのは職人の熟練の技術が必要です。かつては手縫いでしたが、大正時代に5代目がミシンを導入してからは、当時と同じミシンで変わらない製造を守り続けています。

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縫いあがった足袋は、最後に木槌でたたいてなじませます。こはぜ(足袋をとめる爪のような金具)をひっかけるかけ糸も、丁寧に木槌でたたいていきます。こうすることで、糸が肌にあたっても痛くないんです。使う人のためのひと手間、二手間が加わって当店の足袋ができあがります。

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職人技術の結集が、美しい足元をつくりあげる。


現在足袋作りは私と妻、そして父、母、職人さんの計10名ほどで作業をしております。職人のなかには60年近くされている方もいれば、若手は30代の職人もいます。若手の方は、和裁などを学校で学ばれた方から職人となっていただきました。美しい足元をつくる足袋づくりにはすべての工程で技術がいりますので、若手の方からも頑張っていただいています。

また縫う美しい足元にこだわった足袋をつくるには若手からベテランまで、それぞれのプロがパーツごとに担当して仕上げていくんです。こうすることで注文するたびに足袋によって担当者が変わり、履き心地が変わるということもありません。ですからリピーターのお客様にもご満足いただける一足が出来上がるんです。

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新しい世代にバトンタッチ。商社つとめから7代目店主に。


わたしは商社づとめを3年ほどして家業を継ぎました。それまでは全く足袋づくりをすることはありませんでしたので、仕事を辞めてから職人の技術を習得しました。

最初は継ぐことは考えてはいませんでしたが、ものづくりはもともと好きでずっと足元の美しさにこだわり続け足袋づくりをする職人さんたちを見て育ちました。しだいにこっちのほうがむいてるなと思えるようになったんです。プロの手仕事は実際にやってみると難しく、ベテランの職人さんの仕事を見ながら技術を覚えていきました。

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北は北海道まで!?こだわりの仕事に惚れるファンは全国に。


わたしは普段ほかの職人と同じように足袋作りをしていますが、営業担当としてお客様に直接会いに行くこともあります。特に全国各地の百貨店さんなどで年に20回ほど地方で催事を行っています。催事などを通じて、足もとの美しさを求める全国の方に当店の足袋をお届けしているんです。

なかには地方の催事でたびたびお会いするお客様もいらっしゃいます。また北海道などでは特にお客様も多いです。雪深い地域の方は、お座敷でやるような芸事が非常に盛んなようです。各地でお受けしたご注文は、お店に持ち帰りその後のご調整などは郵送などでやりとりさせていただきます。



大野屋總本店が受け継ぐ、日本文化と足もとにやどる美しさ

                           
和の伝統文化というものは様々ありますが、日本の文化に息づく足もとの美しさというものは変わらず残っていくものだと思います。

もちろん、時代とともに昔のように着物で日常生活される方は、今はいらっしゃらなくなってしまいました。けれども、伝統芸能に携わる方は非常に大勢いらっしゃいますし、一般の若い方や外国の方でも日本文化に対して関心が高いかたはたくさんいらっしゃいます。お客様の中には外国の方でも弓道、茶道をされている方もいらっしゃいます。そのため海外の方にお送りすることもあるんです。

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今でも小物などは変わらずに生活に残っていますし、文化は大切にされています。そうした日本文化を大切にする方々にとって必要とされ、ご希望にお応えできご満足いただけるようなお店でありたいですね。

新富町とともに歩んできたお店は日本文化が息づく場所



オーダーメイドの新富型のほかに4種類のサイズを定番として扱っています。また、創業当時から肌着を作ってきましたので、現在も足袋の他にも和装肌着やガーゼの製品やハンカチ、手ぬぐいや割烹着なども扱っています。

ガーゼなどをお求めに店舗にこられるかたもいらっしゃいます。こういったものは当店でデザインや企画をして、昔から馴染みのある職人さんに作ってもらっています。割烹着はオリジナルのデザインで作っています。迷彩柄なんかもありますので、今の時代も使っていただけるものをおいていますよ。

また最近では着物や足袋に縁がない方でも当店の店先で写真を撮って楽しまれる外国の方が増えました。有形文化財となるような歴史ある建物ですので、このあたりのホテルの方の紹介で、見にいらっしゃる方などもいます。

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足もとが語る、日本文化の美学


日本文化を親しむ時は、足もとが重要なポイントです。日本の着物文化のなかで、足もとというのは非常に目が行くものなんです。他が布地で隠れているが、出ている足元は白が多い。だからこそ足もと、足袋に気を使ってらっしゃる方というのは、細やかな気配りが美しいと感じますよ。
日本の伝統文化を楽しむ際は、足元に注目してみるのもいいかもしれません。



【店舗情報】 大野屋總本店
住所 〒104-0041 東京都中央区新富2-2-1
電話番号 03-3551-0896
FAX番号03-3551-1263
営業時間 9:00〜17:00
定休日 土曜・日曜・祭日
>公式WEBサイトはこちら

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