日本の口紅のルーツはここにあり。玉虫色の紅で江戸時代から人々を魅了し続ける、伊勢半本店

17.04.26

日本の口紅のルーツはここにあり。玉虫色の紅で江戸時代から人々を魅了し続ける、伊勢半本店

美しさを引き立てるため、古くから女性たちが嗜んできた、お化粧。化粧品の中でも、くちびるを鮮やかに彩る「口紅」は、それひとつで女性が持つ美しさと、上品さ、心の強さをも、表情に浮かび上がらせます。

レトロなお姫様のキャラクターで有名な、伊勢半の「ヒロインメイク」をご存じの方は多くいらっしゃると思いますが、そのルーツとなった紅屋「伊勢半本店」を知っていますか?

今回は、192年もの間、日本の女性の美を支えてきた伊勢半本店をご紹介いたします。

 

宮様にもご寵愛を受けた紅を生み出す、紅屋


1825(文政8)年、日本橋で創業された伊勢半本店。創業当時から受け継がれ続けている伝統技法によって作り上げられた口紅「小町紅」をはじめとして、かつて宮様にもご寵愛を受けた紅花由来の食紅「御料紅」、絵の具用紅「細工紅」などを販売しています。

 



 

現代において広く取り扱われているようなスティック状の口紅とは異なり、小町紅には驚くべき特徴があります。江戸時代から愛され続けてきた小町紅は、スティックに収められたものではなく、ましてやその色は――美しい輝きを放つ、玉虫色だったのです。

 



 

紅なのに、玉虫色?現代の口紅とは全く違う、江戸時代に重宝された「紅」


そもそも紅とは、紅花の花びらにわずか1%ほどのみ含まれている赤色色素のことを指します。山形県産の最上紅花を用い、創業時と変わらない製法で紅を作ることで、良質な紅の証でもある輝きを持つ、玉虫色の紅が出来上がります。非常に貴重かつ高価であることから、当時は売れっ子の遊女や歌舞伎役者、身分の高い女性たちなど、限られた層の人々によって愛用されていました。

 


お猪口に塗布された紅は、水を含ませた紅筆で溶くことによって、玉虫色から赤色へと移り変わります。また、紅を使用する方のくちびるの色や、水の量や紅を重ね塗りした回数に合わせて、各人各様の発色を楽しむことができます。

 



 

 

戦争の悲しみを乗り越えて受け継がれてきた、日本に二つとない紅の専門店


初代・澤田半右衛門は、紅白粉問屋で20幾年の奉公を経て、独立。呉服屋・伊勢屋の株を買い、「伊勢屋」「半右衛門」ということで「伊勢半」として、35歳の頃に紅屋を開業します。非常に研究熱心だった半右衛門は、紅の本場とされていた京都の紅に引けを取らない玉虫色の輝きを帯びる紅を生み出し、伊勢半の紅はまたたく間に江戸で話題を呼ぶようになります。

 

後に日本唯一の紅屋となる伊勢半本店を、ある時重大な苦難が襲います。それは、戦争――第二次世界大戦でした。戦火によって、多くの伊勢半の従業員や、当時社主であった六代目のご家族がその命を落とします。悲しみに打ちのめされる中で、自身が生かされた意味を考えた六代目は、「これ以上失うものはない」と自らを奮い立たせ、事業を再開します。

 

終戦後、現代化粧品の製造を開始。1949(昭和24)年には、職業婦人の3人に1人は、伊勢半から発売された、キスミーの口紅を持っているほどの発展を遂げました。

 

 

一生懸命にいまを生きる女性たちへ、「メイク」を通して声援を送る


伊勢半本店を含め7つの会社から成り立つ伊勢半グループは、「あしたは、もっと美しく」というコンセプトを掲げています。そこには、多くの女性が毎日行う「メイク」を通じて、女性たちが自分らしく、自信に溢れた毎日を過ごせるような製品を提供し続ける企業でありたい、という思いが込められています。

 

昔ながらの紅を扱っているということもあり、以前はご年配のお客様が多かった伊勢半本店。近年は、メディアの露出が増えたこと等によって、若い方の利用が増えてきています。また最近では、女性にプレゼントするために商品を購入される男性のお客様も増加しつつあります。外国人のお客様に関しては、台湾や中国を中心としたアジア圏からお越しのお客様が増えており、日本の伝統的な口紅として、海外からも注目を集めています。

 



そして、アレルギーをお持ちで一般的な現代化粧品の使用が困難、もしくはオーガニック製品にこだわりがあるという理由から、自然由来である伊勢半本店の紅をお買い求めになるというお客様もお見えになるようになりました。

 

192年の歴史ある企業として、できることを。紅や日本の化粧の文化を後世に伝える、紅ミュージアム


創業から192年にも渡って営まれている企業であるがゆえに、今と昔の両方の商品を取り扱っているということが伊勢半グループの特徴に挙げられます。その特殊性を守りながら、日本らしさや伝統に基づく美を、小町紅などの製品を通してお客様に伝えていくことがグループの使命であると考えています。

 


日本に現存するたった一つの紅屋として、紅や日本の化粧の文化・歴史を後世に伝えていくため、2006年には「伊勢半本店 紅ミュージアム」が開設されました。常設展や小町紅などを体験できるサロンのみならず、日本の伝統文化に関する講座、企画展などを盛んに行っています。

 



 

 

日本文化の一つと言える紅を作り続けてきた、伊勢半本店が目指す未来


192年もの間、日本文化の一つとも言える紅を作り続けてきた伊勢半本店。「歴史の長さもあり、小町紅を古いものだと捉えられがちですが、現代においても魅力ある化粧品だと、私ども自身も実感しております」と、伊勢半本店本紅事業部の八木原さんは仰います。

 



また、紅を溶く瞬間や玉虫色が赤色へと変わる美しさ、付け心地の軽さ、「口紅を塗る」ではなく「紅を点(さ)す」と呼ばれる紅特有の所作など、他の化粧品では得られないことが小町紅の魅力として数えられます。日本の技や文化が集約された小町紅を、更に多くの人々に知って頂くために尽力していくことを目指し、これからも伊勢半本店は日本、そして世界に向けて、江戸時代と同じ製法で作られた由緒正しき紅を届けていきます。

 



 

 

撮影(一部):外山亮一

 

 

会社情報 【株式会社 伊勢半本店】

住所:〒107-0062   東京都港区南青山6-6-20 K's 南青山ビル1F (伊勢半本店 紅ミュージアム)
TEL:(03)5467-3735
営業時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合は、翌日休館)、年末年始

RELATED TOPICS

- 関連記事 -

全ての"ちいきごとの記事"を見る

CATEGORIES

- カテゴリーから記事を探す -

^

ちいきごと

- ikigoto LIVING その他の特集 -