チラシうちわを広告塔にした仕掛人「伊場仙」に学ぶ、420年以上受け継がれる江戸の粋

16.08.05

チラシうちわを広告塔にした仕掛人「伊場仙」に学ぶ、420年以上受け継がれる江戸の粋

夏の涼をとるアイテムとして定番の「うちわ」と「せんす」。あおぐという使い方が多いアイテムですが、なんとチラシなどの広告としてブームとなった時代がありました!

その火付け役となったのは、うちわと扇子(せんす)の老舗専門店「伊場仙」さん。
420年以上続くお店の歴史から、くらしのひと時を楽しむ精神、そして現代にもいかせる粋な使い方を教えていただきました。


江戸っ子の心をつかんだ名プロデューサー!江戸文化の立役者としての歴史



日本橋で創業して420年以上!


当店は天正18年(西暦1590年)に、日本橋小舟町で創業し、震災の際に少し動いたそうですがそのあとまた戻り、同じ場所でずっと続いてきました。

江戸幕府が誕生し、三河・浜松(現在の浜松市伊場町)から、徳川家と共に江戸に移りました。江戸幕府の仕事を受け、現在の日本橋小舟町にて主に和紙、竹製品、などを扱う商売を始めました。当時竹はこのあたりで手にいれることができ、竹と和紙があったことでうちわ屋さんができ始め、伊場仙も製造を始めました。

江戸商人達のご近所づきあいから誕生!チラシとして活躍した浮世絵うちわ



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昔は和紙というものはとても高価でした。しかし江戸時代に入ると、庶民にも広がり手に入りやすくなった。そこで手すきの和紙に、木版で絵柄を刷ったものうちわにして販売しだしたらとてもよく売れたんです。

次第に「こういうものを宣伝したいからうちわに載せてくれ!」と、近所の商人たちに頼まれるようになりました。たとえば婦人の頭につける飾りの新作や、近所の呉服屋さんから売り出す着物の柄です。今では世界の美術館で作品が飾られるような有名な浮世絵師、歌川国芳などに描いてもらいました。歌川国芳も当時はご近所さんの一人だったんです。

こうして生活用品としてのあおぐために使われていたうちわが、地域とのつながりのなかで現代のチラシのような機能で広がっていきました。

人々の心をつかんだ!伊場仙のプロデュース力


江戸庶民の間では粋な絵柄の浮世絵が人気でした。当時は安い値段で浮世絵も買えたため、新しい絵柄が出ればそれを買う人が大勢いたんです。うちわに描かれた浮世絵は、今でいう雑誌の表紙を飾るような感覚で、庶民の間で大変な人気となりました。

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これは当時の有名な俳優さんを描いた絵です。なにやらキセルを吸いながら物思いにふけっている様子です。しかし画面の右端には女ものの帯が描かれている。「さて誰といたんだ?!」という、まるで週刊誌のような一枚です。

これも伊場仙が絵師・歌川豊国に頼んだものです。どういうものを描いてもらうかという注文は、伊場仙がしていましたので、どうすれば人々が楽しんでくれるかということをつかむのが非常に上手だったんでしょう。

浮世絵師の名プロデューサーとして今もボストン美術館に残る功績


伊場仙は江戸後期から浮世絵うちわを扱い始めたことで、初代歌川豊国、歌川国芳、歌川広重などの版元、今のプロデューサーや発行人として有名になりました。

当時うちが製造発行していたものは伊場仙版という、うちが版元だという三本線に○のマークがあります。

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浮世絵も版元として残っているものが何点かあります。国内でも近年展覧会が多くありますが、浮世絵は世界的に大変人気です。当時の版元のマークの入った絵も、海外の美術館(ボストン美術館、メトロポリタン美術館、大英博物館、ヴァンゴッホ美術館など)で見ることができます。



伊場仙のうちわ・扇子は江戸文化と伝統技術が凝縮されたアイテム!



江戸っ子気質になじんだ「大和型」


現在店頭では数多くのアイテムをそろえています。江戸うちわ・扇子はもちろん、京うちわ・京扇子もあります。比べてみると違いがわかります。

京都で広まった京うちわ・京扇子は、幅が狭くできています。しとやかに扇ぐような上品で雅な印象です。宮中などで、顔や口元を隠したりする用途で広まりました。

一方、江戸で広まった浮世絵うちわは江戸うちわという「大和型(やまがた)」です。丸ではなく箱形の四角に近い形でした。浮世絵の画面は四角ですので、浮世絵師の絵を載せるメディアとしてこの形の方が絵が切れずよかった。また、面が大きくバサバサあおげて実用的な点はきどらない江戸っ子の気質に合っていたました。

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扇子にも同じように違いがみられます。江戸扇子は骨の幅が広く数も少ない。絵柄もカラフルなものが多いです。京扇子は骨が細くて多い、絵も主張がすくなくいんです。

江戸時代から変わらない巧みな工芸技術!


伊場仙の江戸うちわは今でも職人さんの伝統的な作業で変わらず作られています。
昔はこの小舟町に職人さんがたくさん集まっていましたが、時代の流れで千葉の館山(たてやま)などの竹の手に入りやすい土地に移られました。館山に行けばわかりますが、道端に竹がたくさん生えているんですよ。

現在江戸うちわは館山で86歳の職人さんが一人で作られています。月に20本ほど、すべて手作業で、全工程をこの方が作っています。この職人さんは竹も家の裏の山でとってらっしゃるんです!

江戸うちわは骨が64本と決まっています。一本の竹の節と節の間をブラシが広がるように均一にさいて、竹の根元を紐でくくり扇形にします。もちろん裂く技術も必要ですが、この後の和紙を張り付けるという工程も、湿度などのりの加減が必要な職人の技術が出やすい部分です。

地域に社会に伝えられる魅力


伊場仙の江戸うちわは今でも伝統的な作業で変わらず作られているため、工芸品として魅力が紹介されることも多くあります。最近では2016年6月12日(日)に日光江戸村で「江戸生活文化伝承館」がオープンしました。江戸時代から現代に受け継がれる職人技術を展示するミュージアムですが、伊場仙の江戸うちわもポップアートなメディアツールとして紹介されています。

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また伊場仙では本社ビルの一階部分を「まちなか展示館」として、一般の方が自由にご覧になれるよう開放しています。通常は伝統的な江戸うちわや扇子を展示していますが、現在は期間限定で書道家さんとのコラボ作品を展示しています。
他にも館山に4~5件あるうちわ職人さんたちの中には、地域の子どもたちを集めてワークショップや教室をひらき、うちわづくりで魅力を伝えてらっしゃる方もいます。



あおぐだけじゃもったいない!大切なのはいつの時代もひとときを楽しむ心


伊場仙のうちわや扇子は工芸品として扱われるものもあります。またお茶の関係者お茶席用や、踊りのかたが舞扇(まいおうぎ)をお求
めになられますが、一般のお客様は日常使い、飾り、贈答用などでのお求めが多いです。

相手を想う、粋なはからい


季節に関係なく多くの方からは贈り物としてもお使いいただいていいます。

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母の日や父の日の贈り物として、またお孫さん世代の方が、祖父母の方へのプレゼント用で足を運んでくださることもありますよ。実際に「祖父が扇子をなくしたので新しいものを探している」と、当店を訪ねてくださる方もいらっしゃいました。そういった大切な方への気づかいも、粋な心づかいで素敵ですよね。

飾り用のものは、立てかける台とセットになっています。個人・法人の方が、海外への土産としてお求めになられます。特に日本橋周辺の法人さんは多いですね。

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小さく軽いのでお土産として最適ですし、江戸らしいものは柄も鮮やかで華やかなものが多いので、プレゼントとして海外の方にはとても喜ばれます。贈答用に柄をデザインしてご注文をうけることもあります。1000本単位でご注文うけることもあるんですよ。
個人の方でも「100歳の記念にまわりに配るので」ということで100本頼まれた方もいらっしゃいました。

メディアだった歴史を生かす!絵柄で表現する日本の豊かな四季や文化



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四季を楽しむかざりとしてうちわや扇子を買われる方もいらっしゃいます。例えば5月なら兜と菖蒲(しょうぶ)の花など、日本の季節を描いたもの。季節に合わせるようにうちわや扇子の柄を変えるのも、ひとときの季節を感じる粋な楽しみ方です。

現代だからこそ粋になる、ひとときの楽しさを引き立てるアイテム!


うちわや扇子は軽量なので、持ち運びできるものです。 海外に行く機会の多い若い世代の方は、ぜひ国内と言わず海外で使っていただきたい!

年末にハワイのような暑い国にいくのでしたら、暑さを楽しむアイテムとして現地で使ったらかっこいいですよ。海外にいて日本の伝統で涼をとるなんて、とっても粋ですよね。お知り合いがいれば、お土産などでも持っていかれても喜ばれると思います。

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普段の生活で使っていないと、突然扇子を使うのはなかなかできないかもしれない。電車で暑いときに手持ちの扇子を広げて仰ぐ、なんていうのも慣れないうちは抵抗あるかもしれないですね。

でも昔もメディアとして広がった経緯がある通り、仰ぐという機能だけがうちわや扇子じゃありません。これからの季節、うちわなどは花火大会などで浴衣の後ろにさして楽しむことができます。伝統的なうちわを組み合わせるだけでぐっと粋になります。夏を楽しむアイテムとしてファッションとともに組み合わせて使ってはいかがでしょう。


店舗紹介【伊場仙】
住所:東京都中央区日本橋小舟町4番1号 伊場仙ビル1階
電話:03-3664-9261
営業時間:午前10時~午後6時
※土曜日営業の時(4月1日~8月30日まで):11時~午後5時
休業日:日曜日・祭日
>公式WEBサイトはこちら

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